学校が代休だった息子(10歳)の希望で、私が最も尊敬する料理家のお一人である辰巳芳子さんのドキュメンタリー映画「天のしずく」を観てきました。

ドラマ性やストーリーのあるお話ではありません。ただ静かに、淡々と辰巳芳子さんを追う美しい映画です。

でも、心に深く迫ってくるものでした。

ところどころにはさまれる、大切な言葉。

「愛することは、生きること」
「食すことは、命への敬意。作ることは、命への祝福。」
「基本的なことは『何気ない、平凡なこと』の中にあります。」

土を大切にする生産者、小学生、終末医療関係者、芸術家・・・多くの方々が登場されました。

中でも、ハンセン病のため、10代の頃から、家族と離れ、差別のなか離島で生涯のほとんどを送ることを余儀なくされた女性のお話が印象的でした。

癌に侵され、終末のの床にある親友のために、自分ができることは何だろう、と考え、「辰巳先生の、いのちのスープを作ってあげよう」と。

指のない両の手で、ゆっくりゆっくり根菜を刻み、不安定な湯煎のポタージュを丁寧に混ぜる姿に心を打たれました。

療養所のある島まで訪ねて行った辰巳さんと、お互いに、「よかった、よかった。ありがとう、ありがとう。」と言い合う姿。

言葉は多くないですが、それぞれに壮絶な人生を歩んでこられたであろう、80歳を過ぎたお二人は、本当に美しかったです。

代替医療の場にいると、さまざまな難病に対して、○○が効くらしい、××先生は、△△とおっしゃっていた、などという情報が入ってきます。

多くの実績のある、さまざまな知恵も素晴らしい。

でも、難しい理論がわからなくても、相手を思って丁寧に、丁寧に、美味しいものを作るって、根源的なことのような気がします。
日々の食卓を整えること、大切にしていきたいと改めて思いました。

「天のしずく」公式ホームページは、こちらですhttp://tennoshizuku.com/。