翌朝は、早起きして黒姫へ。CWニコルさんのアファンの森へ向かいます。

アファンの森を訪れるのは、今回で3回目。1回目の訪問は、こちら。2回目は、こちら

今回は、単なる見学会ではなく、植林に参加させていただくことに。

まだところどころ雪の残る黒姫の森は、一見枯れ木ばかりのようにも見えました。

でも、足元を見ると、一面ふきのとう、こごみ、ぜんまい、そしてタラの芽と、春の息吹が感じられます。奥に見えるのは、ニコルさんの山小屋。

植林のお手伝いは、私が長くやりたいと思っていたことの一つ。

日本の森について、私なりに理解していることを少し書いてみますね。

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都会を一歩離れると、日本もまだまだ捨てたもんじゃない、緑の森や山がたくさんある・・・ようにも見えます・・・が、それは本当でしょうか?

日本に昔からあった原生林は、ナラ、クヌギ、ブナをはじめとした多種の広葉樹からなるものでした。

冬に落ちる葉で土を豊かにし、木の実を実らせ、動物たちに住処を与えました。

動物たちの糞や死骸は栄養となり、広く深く張った樹の根は、地盤をしっかりしたものとし、腐葉土に貯えられた水は、やがて湧水となり私たちの国を潤しました。

ところが、高度成長期に、これら広葉樹は伐採され、かわって材木となるスギやヒノキなどの針葉樹が植えられました。まるで工業製品のように、単一種を等間隔に。

現在、一見「緑の山」のように見える山は、ほとんどがこの針葉樹の人工林です。

針葉樹は、葉も苦く、落ちてもあまり豊かな土になりませんし、根も浅くしか張りません。

動物たちは食べるものや住処を失い、支えのない表土は流れ、水も枯渇してしまいました。

エサや住処のなくなった動物たちは、あるものは死に絶え、あるものは里に下りて行き、そこで「害獣」として殺されました。

さらには、手入れされることなく放置されると針葉樹林の木々はもやしのようになってしまい、動物も住めない真っ暗で鬱蒼とした、それでいて痩せた土の「幽霊森」となってしまうのだそうです。

このような日本の森の状況を憂いたニコルさんが、1986年に私財を投入して黒姫で少しずつ買い増やし、「森の番人」松木さんと共に手入れをして生き返らせたのが黒姫のアファンの森なのです。

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私たち会員は、毎年少ないですが寄付をすることで少しずつ森を買い足すお手伝いをしています。

そして、今回は、初めて、ブナの樹の苗を植えさせていただけることに。

これが、アファンの森の守り人である松木さん。芽が出て4年ほどの苗を持つ手は本当に優しいです。

冬には雪深くなるこの地方で、ブナの苗が枯れないように植えてやるのには、いくつかのコツがあります。一本の苗も枯らさないよう、松木さんは、そのコツを伝授してくださいました。

まず、幹の生えている方向をよく見極め、山の斜面の向きに合わせて植えること。

枯草や落ち葉は、水分を吸収するため、土の中に入ってしまうと幼い根は水を奪われてしまいます。なので、土の中に枯草や落ち葉が入らないように、まずはきちんと取り除いて。

苗の根がのびのびと収まることができるだけの穴を掘ります。放置されていた森の地面は、地下茎や大きな石がたくさんあり、この土を掘る、という作業が見た目以上に大変です。

苗を入れ土を戻すのも、優しく丁寧に、でも隙間なく。

土に偏りがないように、これも丁寧に踏み固めて。

これから暖かくなり下草がどんどん生えて来るため、苗がある程度大きくなるまでは、負けないように下草刈りをするのですが、間違えて苗まで切ってしまわないように、目印の棒を立てます。

一人5本ずつ(作業の早い方はもっとたくさん)植えさせていただきました。

ニコルさんや松木さん、スタッフの方々は、これを、何百本、何千本と植えられるのです。

気の遠くなるような作業ですが、100年後の森のため、子供たちのため、水と緑の豊かな日本のために、毎日こつこつと作業してくださっています。

森を生き返らせるためには、まずは鬱蒼とした森に分け入り、下草や蔓を切り、ダメになってしまった木を伐り…と、地道で時には危険な作業をたくさんたくさん行わなくてはなりません。

きっとご自分たちで作業された方が、早く正確にできるのでしょうが、一番楽しい「植林」という作業を私たち素人が安全に、楽にできるように、お膳立てをし、手助けしてくださいました。

おかげさまで、私たちは、こんなに幸せな時間を持つことができました。本当にありがたいことです。

私たちにできる恩返し。

それは、森をよみがえらせる、という活動をできるだけ広め、伝えていくこと(アファンの森だけではなく、このような活動をされている団体は、ほかにも全国でいくつかあります)。

そして、松木さんがおっしゃるように、いつか自分たちの植えた苗が大きく育っているのを見に帰ること。

それはつまり、自分の植えた苗だけではなく、豊かな自然を愛で、感謝し、守り育てることなのではないかと考えています。

311を機に、今いろいろなことが揺れ動いているように思います。今からでも遅くない、そう信じて自分のできることをやっていきたいと思います。

長くなったので、後半の森見学のことは、別の投稿で書きますね。