大学生の頃、実験器具を作るためのガラス細工の集中実習講座を受講していました。
教えてくださったのは、この道50年のガラス細工職人、安藤名人(残念ながら私たちの卒業数年後に他界されました)。
実験器具用のガラス細工は、創造性とともに、計画性、精度、均一性など、高いレベルの技術が求められます。
扱うガラスも芸術家が使うような比較的「柔らかい」ソーダガラスから、「堅い」石英ガラスまで、温度は、1000℃程度から、時に2000℃以上。
名人の手元で、ガラスが生きているように姿を変え、精巧な実験器具が次々産まれます。
ガラスは、溶融時は、赤っぽく、「いかにも熱そう」な色をしていますが、少し温度が下がってくると(それでも数100℃~1000℃以上)見た目は普通のガラスと何ら変わりありません。
よって、よくあるのが、「慣れてきた頃の火傷」。
私たち学生も、徐冷中のガラスをうっかり触っては、次々と「あちっ!」。で、流水で冷やして、薬、包帯。
すると、安藤名人ぽつりと一言。
「ぼくら職人は、火傷したからって包帯巻くわけに行かないから、冷やさないんだ。こうやって、火を弱めて、炎の上の方に手をかざしてあぶる。痛いよぉ。だけど、こうすると、水で冷やすよりずっと早く治って、また仕事ができるんだ(注)。」
えぇ~、ウソでしょ~と、私たちは、試す勇気もなく、遠巻きに見るだけでした。
けれど、長年の経験と伝承に裏付けられたその言葉は、印象に残るものであり、社会人になってガラス細工の技術を忘れてしまった何年も後まで覚えていました。
時は経ち、ホメオパシーを知った最初の頃の入門講座にて聞いた、先生のお話。
「みなさん、火傷のときは、どうしますか?冷やしますか?ホメオパシーの考え方(似たものが似たものを癒す)では、火傷の時は、ぬるーいお湯に浸けるんです。そうすると、その時は痛いけれど、身体の中に入ってきた熱が、蓋をされることなくうまく出て行き、その後の治りは、ずっと早いんですよ」と。
まさか、こんなところで安藤名人の知恵に再会するとは・・・!
その後自分でも試してみました。もちろん、日常起きる小さな火傷です。
お鍋やフライパンの縁であちっ!とやってしまった時など、コップやたらいのぬるま湯(熱いお湯ではないですよ!)に、そーっと入れてみます。
ぬるま湯がなければ、静かに口の中に入れるのも有効です。
すると、最初は、じんじんじんじん痛み、ぬるま湯がまるで熱いお湯のように感じられます。
そのうち、「じんじん」がだんだん小さくなって行き、ほどなく消え・・・ぬるま湯から出しても痛みは戻ってこなくなります。
私は、水ぶくれや火傷の跡など残りやすい体質なのですが、ぬるま湯で対処するようになってから、跡もほとんど残らなくなりました。
もちろん、大きな火傷(面積が広かったり、深かったり)や、敏感な箇所の火傷、薬品による火傷の時は、救急医療法で習うように、「服の上から流水で冷やして」病院に行ってください。小さい赤ちゃんの場合も、すぐに受診してください。
でも、日常生活で起きる、ちょっとした火傷のとき、よかったらぬるま湯処置、試してみてくださいね。眼から鱗が一つ、落ちるかもしれません。
注:安藤名人は、ガラスと火の達人です。どのような炎のどの位置がどれくらいの温度かを熟知しての「手をかざしてあぶる」です。素人が真似をして、むやみに火の上に手をかざしたりしないでくださいね。
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