ここ数年、ホメオパシーに関しては雑誌などでも取り上げられることが多くなってきましたが、助産院でのK2シロップの問題に端を発し、最近新聞でも何度か取り上げられています。
私の周りでも、「大丈夫?」「どういう意味なの?」と言った声が聞かれます。
今回のK2シロップ問題の関係者のお話を聞いたわけでもありませんし、この助産師の方が所属する団体のやり方は私たちの学んだクラシカルホメオパシー(※1)とは異なる部分もあることから、起きたことに関して、私には新聞で読む以上の詳細はわかりません。
ですので、今回の内容そのものについて、説明したり、弁護あるいは庇護したりすることはできません。
むしろ、なぜこのような悲しいことが起きてしまったのか憤りを感じますし、また、このような形で「ホメオパシー」が広まってしまうことを、残念に思っています。
新聞での論調は、ホメオパシーに対して好意的なものではありませんが、いくつかの議論が混在し、感情的になっているように思います。
これらについて、少し整理し、現段階でChez MOMOとして思うところを論点ごとに書いてみたいと思います。
この投稿を通じて、私が一番お伝えしたいこと・・・
代替療法(あるいは、補完医療)をご紹介する者のはしくれとして、常に誠実でありたい、謙虚な気持ちを忘れたくないということ。
そして、ホメオパシーをご家庭で使われる方、ホメオパスにかかっておられる方、迷われている方、ご自分の心身の状態をなんとかしたいと考えていらっしゃる方へ・・・何か(通常医療でも、ホメオパシーでも、それ以外の療法でも)一つに固執したり、あるいは必要以上に何かを拒絶したりすることなく、常に自分(あるいはご家族)と寄り添い、身体と心の声を聞いて考えて選択してください。
ホメオパシーでの素晴らしい治癒例はたくさんありますし、世界には、生涯をかけて真摯に取り組んでいらっしゃるホメオパス(ホメオパシー療法家)あるいは医師ホメオパスが数多くいらっしゃいます。
私個人の意見としては、患者さんとホメオパスがよい関係のもとで、きちんとケースをとることができ(これには、ホメオパスの力量+患者さんの治りたい気持ちが必要です)、正しいレメディを選ぶことができたなら、必ず何かしらのよい影響をもたらすと考えています。ホメオパシーは、深い意味での根本的な治癒に導くことができる療法だと思っています。
通常医療を考えてみてください。どんなに有名なお医者さんであっても、自分(自分の身体、自分の病気、自分の考え方、自分の性格や気持ち)との相性というものが存在します。
おかしい、と思ったら自分で考えてお医者さんを変えればいい。その自由と責任が患者にはあるのです。
同様に、通常医療→代替療法(補完医療)もあり。もちろん代替療法→通常医療もあり、代替療法→別の代替療法もあり、ホメオパス→別のホメオパスもあり、であってほしいと思います。
前置きが長くなってしまいました。以下(もっと長いです)新聞を騒がせている5つの論点について、私の思うところを書いてみたいと思います。
<その1> 「ホメオパシーには科学的根拠がない」
私は、約20年、一般企業の科学の分野で研究を行っている人間です。
ホメオパシーを知った当初、私の最大の関心は、「ホメオパシーはなぜ効くのか?」というところにありました。
これを理解すること、そして、自分の周りの科学者仲間を納得させられるような説明が出来るようになることが、学び始めた当時の私のモチベーションの一つでもありました。
ホメオパシーと出会って8年。いまだにこの答えはわかりません。でも、私の気持ちは大きく変化しており、今は「現代科学で説明できなくてもいいじゃない」と思っています。
というのも、科学の世界では、発明、発見の何年、何十年も後になってようやく原理や反応機構が解明される、というようなことは、日常茶飯事。
また、今も現代科学だけでは説明の出来ないようなこともたくさんある、ということも、身にしみて感じるからです。
特に生命科学の分野では、これだけ遺伝子の研究が進められ、さまざまなことが明らかになっているかのように見えるにも関わらず、未だに人間はゾウリムシの1匹も「合成」することはできずにいるのです。
ですので、「ホメオパシーは、科学的に(あるいは、現代科学では)解明されていない」ということには同意しますが、それがイコール「根拠がない」あるいは、もっと言えば「偽療法だ」というのには、賛成しかねます。
<その2> 「ホメオパシーは、二重盲検法(※2)で証明されていない」
似たようなことですが、これに関しては、ホメオパシーの基本的な考え方を知っていれば、ナンセンスな議論である、ということがわかります。
ホメオパシーは、3000種類とも4000種類とも言われる膨大な数のレメディの中から、「その人」に合ったレメディを選ぶものであり、「咳に対してはこれ」「熱に対してはこれ」「関節痛に対してはこれ」というような選び方をするものではないからです。
ちなみに、私の手元にあるレパトリー(症状からレメディを見つけ出すための索引のようなもの)で、「咳」と引くと、何百もの項目があるのですが、主だったものだけでも実に500種類以上のレメディが候補として挙げられます。
ということは、乱暴な計算ではありますが、咳をしている人に無作為に「咳のための」レメディを選んだ場合、ぴったりとしたレメディに行き当たる(つまり「効く」)確率は500分の1以下ということになるのです。
もちろん、ホメオパシーのレメディを選ぶ時には、そんな確率論的なことを行う訳ではなく、同じ咳でも細かく観察し、また、他の症状や精神の状態、その人の体質や性格なども合わせて、ぴったりと合う1つのレメディを選ぶのです。
ちなみに、ホメオパシーでは、レメディの効果を知るために、プルービングという試験方法が取られます。
<その3> 「ホメオパシーを推奨することで医療機関にかかることを遅らせ、病気の重症化を促す」
これは、大きな問題だと思います・・・が、避けられる、いえ、当然避けるべき問題だと強く考えています。
これまでも何度も何度も書いているように、ホメオパシーの前提は、「寄り添い、しっかりと観察する」ことだと私は考えています。
ホメオパスだけでなく、患者さんや家族にも言えることです。
通常医療に対しても、代替療法に対しても、妄信的になることなく、自分(と家族)の健康は自分で守る、と言うスタンスを常に忘れないで欲しいと思います。
通常医療と、代替療法(補完医療)は相反するものではないはずです。上手に使い分け、時には併用し、迅速な判断、行動が必要とされる時には、そのように。救急車を待つ間に、自分なりに出来るお手当をする、と言う方法だってあるのです。
治癒に向かう過程での一時的な悪化(「好転反応」という言葉を使われる方もいらっしゃいますが)と、明らかな悪化も、きちんと観察し、身体の法則にしたがっているか確認すること、必要であれば医学的な数値を測定してもらうことで、見分けられるはずです。
<その4> 「ホメオパシーはK2シロップの代替になるのか」
私は、医師でも助産師でもないので、ここのところは、はっきりとした根拠を持って述べることができません。
大人が、通常の食物から特定の栄養素を上手に吸収できないような場合には、サプリメント的に、その吸収を助けるようなレメディ(多くの場合は、ティッシュソルトを用います・・・ティッシュソルトに関してはまたいずれ)を摂るようなことがあります。
でも、赤ちゃんに対して、こういうことが期待できるのか・・・
医療従事者であり、同窓生のsakoさんが、これに関してわかりやすい記事を書いていらっしゃいます。よかったらご覧になってみてください。
sakoさんのブログは、こちら
私の考え方としては、重複になるのですが、きっちり寄り添い、観察し、速やかな判断、行動が取れれば、このような悲劇が起きることは、きわめて少ないのではないかと思います。
でも、(「自信がない」も含め)そういったことが出来ない事情があるならば通常医療に従ったほうがよいかもしれません。
もちろん、通常医療だって100%ではないことは、みなさん御承知だと思います。
今回の助産師さんがどのように説明してレメディを与えたのか、K2シロップを与えなかったのかわかりませんが、個々の赤ちゃんの様子から判断するのではなく十把ひとからげに「とりあえずこれを飲ませておいて」と言ったレメディの与え方をしたのであれば、残念ながらホメオパシーの原則からは外れているように思います(拝見したのではないので、わかりません)。
<その5> 「イギリスでは『英国議会下院の委員会が英政府に勧告を提出』と」
これは、意図的な報道なのでしょうか。そうであれば非常に残念に思います。
私が聞いたところでは、「英国議会下院の委員会が英政府に勧告を提出」したのは、その通りなのだそうですが、それに対して英政府は却下した、というのが現段階の状況だそうです。
私も含めた日本人は、テレビや新聞で報道されていると、つい鵜呑みにしてしまう傾向があります。
素晴らしい報道ももちろんたくさんありますが、中立な立場の意見とはとても言えないもの、信用できる裏付けを取ったり、調べたりしたわけではないものも多く見られます。
大切な情報は、きちんと自分で確かめる、というスタンスを忘れないようにしたいものです。
以上、ずいぶん長くなってしまいました。分かりづらい点も多々あるかもしれません。「で、結論はなに?」と言われると、一言で言えるわけではないのですが・・・。
ホメオパシーは、健康な心身を取り戻し、QOL(Quality of Life = 生活、人生の質)を上げるためのものであるはず。私自身も、畏敬の念をもって取り組んでいますし、日本でも正しい姿で広がってほしいと、願ってやみません。
以下、文中の注釈です。
※1 クラシカルホメオパシー ホメオパシーの流派の一つ。その人の深いところに作用するレメディを探し、例外を除いて一回に一種類の投与を原則としています。一種類のレメディの後、経過を確認してから、その後の方針を決めるのが一般的な方法です。現在日本で最も大きいホメオパシーの団体はクラシカルではありませんが、世界的には、クラシカルが主流となっています。
※2 二重盲検法 薬や治療法の効果を見るための手法の一つであり、治療しようとする患者を群に分け、片方の群には試験する薬を、もう片方の群には、偽薬(プラシーボ)を与えるのが盲検法。この時に、観察者バイアス(観察者の「ひいき目」)の影響をのぞくため、医師あるいは観察者にも、どの群にどの薬を与えたかを知らせない場合は、二重盲検法と呼びます。
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