10年前のあの日。
わたしは、20年務めた会社を辞めて間もなかった。
父が倒れて入院した直後。
息子は小学生になっていたけれど、産休中の友人と手分けして、
学童や保育園に残る帰宅困難者の子たちを預かりに行った。
途切れる電波の中でメールを受けつつ、
父母を待つ子たちと、地図を見ながら
「お父さん、いまこの辺だって」
「お母さん、頑張って歩いてるよ」
余震が残る中で、不安を感じさせないようにしゃべり続けた。
保育園の先生方が、覚悟を決めた笑顔でおむずびを握っておられたのが、
印象深く感激したのを鮮明に覚えている。
10年経って、また趣が違うわざわいが世界を覆っている。
変わらないことを嘆く気持ちはあるけれど、
笑顔で励まし合い、乗り越えられる人間の力を信じたい。
わたしたちも、捨てたもんじゃないよね、って笑い合えるように日々を正直に真摯に重ねる。